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名古屋高等裁判所 昭和28年(ラ)58号 決定 1954年11月18日

抗告人 藤原明(仮名)

主文

本件抗告は之を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人は原審判を取消し、申立人の就籍許可申立を認める旨の裁判を求め、その理由とするところは別紙抗告理由書の通りであり、疏明として証明書を提出した。尚、当裁判所は抗告人本人を審問した。

依て按ずるに、原審に於ける抗告人本人並びに藤原雪子に対するの審問調書、家事調査官作成の調査報告書、舞鶴引揚援護局業務部長作成の回答書、広島市長職務代理者作成の回答書の各記載と当審に於ける抗告人審問の結果とを綜合して判断すると、当裁判所も亦原裁判所と同様に抗告人が就籍許可申請の適格者たる日本人であると認めることはできないので、その就籍許可申立を却下した原審判は相当であり、本件抗告は理由がないから之を棄却すべきものとし、家事審判法第七条、非訟事件手続法第二十六条を適用し、主文の通り決定する。

(裁判長判事 北野孝一 判事 伊藤淳吉 判事 小沢三朗)

抗告理由書

抗告人は亡父中川正、亡毋中川花子間に生れた長男であるが、幼少の頃より朝鮮○○○に渡り、其の上北支等にも在住して居たため、朝鮮在住当時日本小学校に通学して居たが、言語等に方言、なまりがあり、原審決定は申立人(抗告人)が就籍許可申請の適格者であるべき日本人であるとの心証を得られないので却下するとの理由なるも、抗告人は日本人であるため○○に於て、相当な冷遇を受けたのであり、又引揚に際しても日本人である適格者のみを強制引揚をせしめるものであつて、かかる終戦直後の情勢に於て日本人を語るのは身の危険は勿論食住等に困る事は必然である。かかる事を敢て忍んでこの強制引揚に従うという事は引揚者でなければ判断等も判りかねる様にも思われる。右の通りの実情なるにより抗告人が完全な日本人であるに拘らず申立を却下するとの審判は不当なるにより本抗告の申立に及んだものである。

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